ABOの「音楽・生聞(ナマギキ)通信」

【第1話】

 

1990年、大旋風を巻き起こしたこのミュージシャンの話。

 【おどるポンポコリン】

 

日曜日の夕方、家族で楽しむTV番組として人気の長寿アニメ「ちびまる子ちゃん」。 その初代オープニングテーマを歌っているのが、近藤房之助さんだ(メロディーを歌っている方ではなく、イエ~ィ!と掛け声を掛けている方です。念のため)。・・と言っても、名前までご存じの方は少ないと思う。
BBクィーンズというグループ名で、ヒットしたのはその一曲。そのため、「一発屋」と思われていたり、さらに、ハデハデの衣装にサングラスで、紅白などに出ていたために、「イロモノ」というイメージのまま終わってしまったフシがあるが、実は彼、長年に渡り、ライブハウスを中心に活動していた超実力派の歌手なのだ。

 名古屋出身の房(ふさ)さん(いつもこう呼んでいるので、こう呼ばせてもらいます)は、最初関西のライブハウスで活動を始めたが、その後、東京に進出。私の経営するライブハウス「ジロキチ」にもよく出てもらった。
 日本人離れしたディープな歌声、抜群の歌唱力、パワフルなギター。日本人ブルースシンガーとして、彼の右に出る者はなく、細身の皮ズボンに、長い髪を後ろで束ね、鋭い目線に、ギターを携えた姿は武士の様でもあり、男も惚れるカッコ良さ。(あ、ブルースというと、柳が瀬ブルースとかを思い浮かべる人も多いかと思いますが、ここでのブルースは、黒人音楽の種類のひとつで、まあ、とにかく格好イイ音楽です) 

 折からのイカ天ブームもあり、房さんのライブの動員数はうなぎのぼりに。「おどるポンポコリン」って一体誰が歌っているの?という覆面性も話題になり、一部には松崎しげる説も流れていたが、ファンにはあの特徴的なイエ~ィ!だけですぐにバレてしまったようだ。
 あまりのヒットぶりに、やっかみの声もあったが、房さん曰く、
「バンドのメンバーにだって、生活があるし、家族もいる。聞いてくれる人が増えるなら、テレビにだって出る」その言葉に、房さんのプロのミュージシャンとしての男気を感じた。「ポンポコリン」の後、彼は人気と実力を兼ね備えたミュージシャンとして、大きな会場でもコンサートをするようになった。が、その一方で、相変わらず小さなライブハウスでの演奏も地道に続けている。手の届くところで聴いてくれるお客さんを大切にする姿勢は今も変わらない。
「俺も少しは、客、入るようになったから、恩返しがしたい」
と、私の店で十日間連続ライブをしてくれたこともあった。
ポンポコリンブームは過ぎ去った後だったのに、連日満員御礼。最後の方は、声も枯れ、椅子に座っての演奏になることもあったが、これがまた良かったなあ。まるで、何日もかけてじっくり煮込んだおでんのような味わい。
連続で通ってくれたお客さんもいて、最終日には、房さんもお客さんも店のスタッフも、お互い疲れ果てた戦友のような妙な一体感が生まれたものだ。

さて、房さんは今夜も何処かでギター片手に歌っている。ここ、当別にもいつか来てくれるように声を掛けておこう。